2006年12月21日(木曜日) 中国新聞

「山の神」を舞う巻本さん(中央奥)ら保存会のメンバー

志合わせます

岩国市美和町・山代白羽神楽保存会
伝統の舞 復活目指す
 トントンストトン、トントンストトン・・・。岩国市美和町二ツ野地区にある白羽神社。薄暗い社殿に、軽妙な太鼓の音が響き渡る。金色の衣装に身を包んだ舞い手。リズムに合わせて小気味よく舞う。続いて舞に加わった白装束姿の四人の若者。金色の衣装の舞い手をぐるぐると回り始める。
 九年に一度、白羽神社の祭りで、深夜に奉納される「山の神」。災いをもたらすとされる山の神を、陶酔状態の舞い手の体にいったん乗り移らせ、わらの大蛇に封じ込めて平安を祈願するという。
 岩国市北部に伝わる山代神楽の一つである白羽神楽。起源は江戸時代とされ、県の無形民俗文化財の指定を受ける。中でも「山の神」は、近隣の神社では舞うものの、ショーなどでは披露せず、全国的にも珍しい神秘的な舞として知られる。
 山代白羽神楽保存会の会員は、二十歳代から七十歳代の十八人。「山の神」や「大江山」など十一の演目がある。春から秋の間、週に二、三回、社殿で練習。浅畑彪(ことら)会長(73)らベテランが指導に当たる。
 「山の神」で、「天大将軍」と呼ばれる金色の衣装の舞い手を二十回以上務めた巻本重樹さん(66)。「激しい舞なので、一週間寝込んだ人もいる。毎回、緊張します」と明かす。浅畑会長も「災難を避けるため、戦時中も続けられた大事な舞なんです」と力を込める。
 以前は、ほかにも十数演目の古い舞があったが、伝承されなかったという。「いろいろ調べて、何とか復活できれば」と浅畑会長。「後輩たちは大切に習わしを守り、伝統ある舞を後世に伝えてほしい」と期待している。    (清水大慈)